脂肪の摂取量と乳癌は関係あるの?
2010/10/08(金)
すなわち、油っぽいものを好む女性は乳癌になりやすいか?という疑問ですが、この関連については肯定する報告と否定する発表が交錯して来ました。 理論的には、体内の脂肪細胞などで乳癌の原因物質であるエストロゲンが合成されることから肯定的に考えてよいと考えます。事実、最近の文献(Br J Cancer 2003, 89:1672−1685)からも、やはり関連あり!でした。これはメタアナリシスMeta-analysisという統計学的に最も信頼度の高い方法での解析結果ですので真実だと思います。全脂肪摂取、飽和脂肪酸の摂取、肉類の摂取の危険性は全てイエス!と判明。油っぽいものを好む女性の乳癌の発癌危険度は約20%増しとのこと。母親や姉妹に乳癌の方がおられれば要注意とされるのは、遺伝すなわち遺伝子レベルでの発癌よりも食生活の類似性に起因する割合が大きいことが推測されます。親子の嗜好が似ていることは時には罪作りなことになります。心当りがあられる女性は必ず、視触診だけでない検査のある乳癌検診を受けましょうね!
飲酒や喫煙と乳癌発生との関連は?
2010/10/08(金)
ともに関連は黒!です。毎日30g(ほぼ2杯のウイスキーに相当)以上のアルコールを飲用した場合、非飲酒者に比べて乳癌罹患率が89%増悪することが示されました(Cancer Epidemiology,Biomarkers and Prevention 2003;12:1061−1066)。乳癌の中でも近年増加している小葉癌という型の発癌はなんと!330%の増加率でした。
一方、喫煙の関連ですがこれも従来考えられていたより大きいことがわかりました(Journal of National Cancer Institute 2004;96:29-37)。11万6544例の女性を追跡して乳癌リスクを調べた大がかりな報告です。
(1)20歳以前に喫煙を開始(2)初産以前に5年以上の喫煙歴(3)長期喫煙(4)1日20本以上の喫煙、これらのどれかに該当する方で今、現在も喫煙されている方は30%もリスクが高まりますのでご注意を!飲んで、吸っている女性は危機的に要注意ですね!
好発年齢は?
2010/10/08(金)
二つのピークがあります。まず、50歳前後、すなわち閉経直前です。これこそ卵巣から分泌されるエストロゲンによる発癌です。
次が60代です。左右の腎臓の頭側にある副腎からエストロゲンの前駆物質(男性ホルモンの一種)が作られ、全身の脂肪細胞などに存在するアロマターゼという酵素によって、この前駆物質がエストロゲンに変化します。この副腎由来のエストロゲン刺激による発癌が60代に第二のピークを発生させるのです。
ライフスタイルの欧米化はこの二段階のエストロゲン刺激をより高めることになり、閉経後の患者さんを爆発的に増加させることになります。
発生しやすい部位は?
2010/10/08(金)
乳房を上下内外に四分割してみると上外四分の一に最も発生しやすいのです。ここが乳腺の量が最も多いからだと考えます。左右の乳房ではどちらという有意な差はありません。
身内に乳癌にかかった人がいて心配です。
2010/10/08(金)
血縁者に乳癌罹患者がおられるのなら要注意です。母親または姉妹に乳癌の方がおられれば2〜4倍、母も姉妹もとなると4倍以上の危険性があります。
しかし、その多くは遺伝ではありません。数種の乳癌遺伝子がわかっていますが、遺伝子異常による発癌は全乳癌の5%ぐらいです。